現役パティシエと学ぶ、お菓子の歴史

ヨーロッパを中心にお菓子の誕生から現在まで、その背景も一緒に学んでいきましょう。

「プティフール」  

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「プティ・フール」

 

ざっくり言うと、一口サイズの小さいお菓子の事です。

17世紀頃、この言葉が生まれる前に“フリアンディーズ”とも呼ばれていたのは、元々“フリアン”が美食家や特に甘いもの好きの人々を意味していたからでした。

フリアンディーズはその後、現代にも使用される、“グルマンディーズ”という言葉にとって代わられます。

 

そして、「プティ・フール petit four」=(小さい窯) の呼び名の由来は、温度調整の難しい昔の石窯で、肉などを強火(グラン・フーgrand feu)で焼いた後の弱火(プティ・フーpetit feu)で、魚やお菓子などのデリケートなものを焼いていたところから来ています。

プティ・フールには大きく二つの種類があって、焼き菓子のプティフール・セックや、一口サイズに作られた生菓子のプティフール・フレ(またはプティ・フールグラッセ)があります。

 

また、ビュッフエ、ランチ、カクテルパーティなどで出されたり、フランス料理のコースでデセールとともに提供される「プティ・フール」ですが、似たような言葉で、“ミニャルディーズ”という言葉もあります。前者に比べて、後者の方がデリケートなデザートのようなイメージがありますが、どちらも詰め合わせにして手土産になることもしばしばです。

「ミニャルディーズ mignardises」は、フランスの古典主義画家で愛くるしいものを多く描いたピエール・ミニャールの名前が語源です。

 

 

 

 

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 こちらは、どちらかというとコンフィズリーになりますが、

尾山台“オー・ボン・ヴュー・タン”のショーケース。

色鮮やかです・・・!

 

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そしてこちらは、青山で最近話題のミニャルディーズ専門店

“アン・グラン” のプチガトー

フランボワーズの大きさを見て頂くとわかると思いますが、ひとつひとつがとても小さいのです。

それでも、どれも中までしっかり作りこまれていて、普通サイズのガトーと考えても何ら劣らない細かさでした。

 

通常のサイズのガトーの仕上げでも大変ですが、更に細かい職人の技には頭が下がります。伝統的なプティ・フールやコンフィズリー、ボンボンショコラなどは、並べているパティスリーは都内にもいくつかありますが、それらは見ているだけでもとてもワクワクします。

 

日常生活ではあまり注目しないサイズのお菓子たちですが、ぜひ機会があれば試してみてはいかがでしょうか・・・

Comme les francais

 

 

「乳製品」  ①

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ご無沙汰しております。

 

今回は乳製品の誕生について書きたいと思います。

 

前回の記事とつながりが無くて申し訳ありません・・・

勝手ですが、今突然、仕事をしている中で急に出てきた関心や、気になっているお菓子から、気まぐれに書いていこうと思います。

それでも飽きずに覗いていただけると幸いです。

 

さて、乳の加工食品がいつごろから存在していたかというと、それには、はっきりとした証拠はありませんが、おそらく紀元前3000年より以前にはバターとチーズが存在していたと言われています。

なんでも、メソポタミアシュメール人が、会計簿をつけていたことから分かったそうです。

 

そして当時、その原料となっていたのは、おもに羊や山羊の乳でした。

牛も家畜として存在はしていましたが、古代の牛の原種は大型で獰猛であったため扱いづらく、なかなか普及しなかったのです。

 

私はまだ食べたことがありませんが、羊のバターは白くて脂肪分が高く、ロックフォールチーズのような味がするそうです。対して山羊の乳からはバターは作れず、もっぱらチーズに加工されるそうです。山羊チーズには、有名なシェーブルチーズや、ナポレオンの故郷のコルシカ島の名産、ブロッチュチーズ(ブロッチョオ)などがあります。地中海付近には、今もメソポタミアの文化が残っているようです。

 

バターを保存する設備のない当時は、お菓子作りにも、バターよりラードや植物性の油、そしてチーズなどもよく使われました。

 

次回はそんなお菓子も少し紹介したいと思います・・・

 

「ガレット・ブレッサンヌ」 発酵菓子 ①

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今日は「発酵菓子」についてです!

 

そして少し順番を変えて、先にお菓子を紹介しつつ、パンの元、酵母の誕生に迫っていきたいと思います。

やはりお菓子そのものが出てくると、書いている私も楽しいのです・・・

 

フランス菓子で発酵菓子といえば、まず始めに“ババ・オ・ロム”“サバラン”を思い浮かべる方が多いかとは思いますが、さて、こちら

 

 

 

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“ガレット・ブレッサンヌ” というお菓子、ご存知でしょうか?

この写真は、以前受けた伝統菓子の講習会のものです。

このお菓子は、フランスはリヨンの北、ブレス地方が発祥のお菓子です。

バターが入ったブリオッシュ生地の上に、クレーム・ドゥーブルという脂肪分の高い生クリームを塗って焼きます。生地が焼けるにつれて、溶けたクリームが浸み込み、なんとも言えないクリーミーなパンが焼けます。

写真のものはカシスの実をのせてアレンジしていますが、本来はシンプルなお菓子です。

日本ではクレーム・ドゥーブルが手に入りにくいので、クリームチーズと生クリームなどで代用することがあります。

 

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こちらは私が自宅で焼いたもの・・・

少し浮きすぎてしまったのと、クリームチーズに加える生の割合を増やせたら良かったかなと思いました・・・

 

日本のパティスリーではあまり見かけませんが、パン屋さんの方が置いているかもしれません。都内で有名なところであれば、“ジョエル・ロブション”のブーランジェリーで小ぶりな“ガレット・ブレッサンヌ”を買うことができます。

他にももし目撃された方がいれば、ぜひ教えていただきたいです。私の大好きなお菓子のひとつです。

 

では次回は酵母について・・・

 

「小麦粉」 ②

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 では前回の続き、「小麦粉」を使用したお菓子の誕生について

 

 

 私は小麦粉を使用したお菓子の誕生は

   “お菓子の誕生”

 とも言える出来事だと思っています。

 

 しかし、これを説明するのはとても難しいことです。

 なぜならこの事について考えようとすると二つの問題に行き当たるからです。

 まず、お菓子づくりに関する最初の記述が古すぎて伝説の範囲であるという事と、そもそもお菓子とは何か、という事です。これらの問題の答えは曖昧です。

 

 お菓子づくりに関して書かれた最初の記述は紀元前1000年頃、旧約聖書にあり、アブラハムが聖人をもてなす為に妻に「小麦粉をこねてパン菓子を作りなさい」と言っているものです。聖書の中の設定では、これは前2000年代のこととされていて、小麦粉以外の材料や作り方は分かりませんが何か日常のパンとは違う、贅沢なもの、“お菓子”だった事が分かります。

 では、“お菓子”とは何なのでしょうか。もちろん当時は、現在の様にキャラメルやチョコレート、クリームなども到底生まれていません。

 人が生きるために何かを食べ、生食が困難なものをなんとか加工し、パンを焼いたその後に、味が良くなるように、貴重な何か、例えば油分や糖分を少し加えて誕生したとっておきの食べ物、それが“お菓子”なのだと私は考えています。お菓子も元々は日常の食事だった、だからその境界線は今なお曖昧なのです。

 

 誕生したばかりの贅沢品は、主に神への供物品にされる他、婚礼の儀式などで食べられました。しかしそれはやはり、現代菓子とは比べ物にならない程に質素なものだった事でしょう。

 今でもお菓子が特別な食べ物であることは変わりませんが、私はお菓子は食事の中のひとつであるとよく考えます。なんでも美味しいものが手に入りやすくなった現代ですが、一方世界的な材料不足も言われています。

 お菓子の歴史を勉強することは、同時に、お菓子の今を考えると言うことではないのでしょうか・・・

 

 

 こちらはルーブル美術館の“古代のパン職人”

 

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「小麦粉」 ①

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 これまたお菓子作りに欠かせない材料の一つ、

 

「小麦粉」

 

 について学んでいきたいと思います!

 

 小麦粉といっても幅広く大変な種類があります。ひとつの記事にとても書ききる事はできませんし、まだまだ勉強したりないところですが、やはり始めはまずその誕生から、少しずつかじっていきたいと思います。

 

 周知のとおり、小麦粉は小麦を挽いて作られた穀粉ですが、その先祖をたどってみると、紀元前1万年以上前の旧石器時代からすでに中東やエジプトに野生に繁茂していたものに行き当たります。

 そして紀元前8000年頃、農耕が始まり、前3000年頃のエジプト文明では小麦を臼で挽いて製粉しパンを焼いていました。

 

 酵母については別の回に詳しく書こうと思いますが、パンの誕生は前4000年頃より前の話なので、巨大文明で臼が発明されるより以前は、岩などのくぼみで直に、地道に麦をすりつぶしていたと言います。

 また当初製粉されていたのは、より栽培が環境に合っていた大麦が中心でしたが、次第に小麦の加工のしやすさに気がついた人々は、小麦をメインに作るようになるのです。

 

 こうして、世界にお菓子の材料が出揃い始めるのですが、実際に小麦を使用したお菓子がどの様なものから始まったか、次回紹介していきたいと思います。

 

 

 こちらはパリで人気のブーランジェリー “デュ・パン・エ・デジデ”

 

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「pâtisserie」

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 今回は言葉 ‥‥

 

「pâtisserie」  パティスリー  

 

 この言葉の語源についてです。

 

 日本でも随分と定着しましたが、フランス語でお菓子屋さん(特に菓子職人、パティシエのいる)または、お菓子そのものを指す言葉です。

 

 この言葉の出現は1328年頃とされ、元々はpâte(小麦粉に牛乳や卵、または水などを合わせて練った生地)で作られる食品を指しました。

 しかし砂糖の回でも書いたとおり、当時はまだお菓子作りに砂糖を使用することは一般的ではありません。pâte職人、パティシエたちは、甘さを控えたパイ生地で果物だけでなく、肉や魚を包んで焼いていたのです。

 その仕事は菓子職人というよりはもはや、料理人(キュイジニエ)に近いものでした。

 

 そしてその後、砂糖商人や肉屋や酒屋、様々な食品の販売権争いののちに、ようやくパティスリーが“お菓子屋さん”としての成り立ったのは、15世紀末、1497年ごろでした。

 今から500年と少し前、現在とは違うお店のかたちや、pâtisserieに定められていた規則などについては、また別の機会に少し書ければと思います・・・

 

 

 こちらは、現存するパリ最古のパティスリー “ストレール”

 

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「メレンゲ」 

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 今回はお菓子としてのメレンゲの誕生について少し書きたいと思います。

 

 ウィキペディアによるとメレンゲは、

「卵(鶏卵)の卵白を泡立てた食材、およびそれを用いた菓子のこと。」

と書いてあります。また、その名前が確認できる最も古い文献は1692年のフランスの料理本であったともあります。

 またよく言われることには、18世紀中ごろ、スイスのマイリンゲン(Meiringen)村でガスパリー二という菓子職人が考案したとか、ロレーヌ侯スタニスラス・レクチンスキーお抱えの職人の考案したなど、諸説あり真相は定かではありません。

 

 しかし私が今一番有力だと思っているのは、16世紀のイタリア説です。名前こそメレンゲではありませんでしたが、卵白に砂糖を加えて泡立てたお菓子が存在していました。

 アブルッツォ地方のある一家で考案された、“ズッケ・マリターテ”というお菓子です。(マリア様の砂糖という意味) どの様なお菓子かというと、ホップとスイカの種と粉糖を混ぜ合わせたものに、卵白を加えて泡立てた砂糖を焼いたものを混ぜたものでした。文献だけなので、出来上がりは想像するしかないのですが、私は砂糖が多めの、ガリリと焼いたメレンゲに粉をまぶした、メレンゲ菓子というよりどちらかというと砂糖菓子だったのでは・・・と勝手に考えています。本当のところは分かりません。

 どちらにしても、メレンゲ菓子には砂糖が不可欠です。ヨーロッパとしては初期から砂糖を獲得していたヴェネチアやイタリアの貴族の間で、最先端のお菓子が生まれていたとしてもおかしくないでしょう。

 

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こちらはフランスのパティスリーで見かけた、大きなメレンゲ!!

大人の顔ほどのサイズがありました。

日本では焼きメレンゲだけを食べる習慣はあまりありませんが、あちらではポピュラーなおやつなんですね!

なるべく、ブログには美味しい写真も上げたいと思っているので、画像収集も頑張ります!

さて、次回は何についてでしょうか・・・お楽しみに

 

 

いつもの材料をお得に購入(cotta)